キット組立講座

東野のキハ501

東野と書いてトウヤと読みます。東北本線西那須野駅から分岐して那須小川までの24.4km(1939年6月からは黒羽まで13.1km)をひた走っていたのが東野鉄道です。
 蒸機ではボールドウィンの1-B-1が、DLでは箱型のDC20が有名ですが、これに負けず劣らずの名優、それがキハ501です。
キハ04のコンパクトさとキハ07の流麗さ。模型人だったら04の側板に07の妻板を持ってきて、なんて考えるのではないでしょうか?「事実は小説よりも」を地で行ったスタイルが魅力です。
 地方私鉄の模型を楽しんでおられる方でしたらお判りだと思いますが、07ってチョット大き過ぎるんですよネ。でもあのマスクが良いな。そんな方にピッタリです。床下にモーターを収納してインテリアを装備していますので、才色兼備の魅力とでも云いましょうか。じっくりと順序だてて説明していきますので、この通りに組み立てれば、さして難しいキットではありませんので、チャレンジしてみて下さい。

第1回
1.車体から組み立て始めます。まずウインドウシルとヘッダーを半田付けします。ランナーが少し残るくらいにしておき、半田付けが終わってから仕上げると良いでしょう。シル/ヘッダーの裏側に半田を薄く引いておく「半田メッキ」をすると、作業性が良くなるかも知れません。


2.次に窓枠とドアーを半田付けします。窓枠は車体の裾合わせで位置決めをして半田付けをします。ドアーはスリットがある方が前面側です。


3.妻板の工作に掛かります。まずブーメラン状の板を窓穴の下面に合わせるようにして半田付けします。この上に乗せるように窓枠を半田付けしますが、各々の窓枠は注意深く切り離しましょう。また、表裏を間違えないようにして、ワイパー用穴がある方が中央の向かって右側になるように留意しましょう。次に今度は窓枠の上に乗せるようにして、同じブーメラン状の板を半田付けしますが、その際に妻板とボディーとの接合ポイントまでの「空白部」は左右均等になるようにして下さい。


4.妻板の床板を作ります。写真のようにブーメラン状の板と凸型の板とを組み合わせますが、凸型の板の細く出ている部分がブーメラン状の板から出るような位置にセットして下さい。出来上がった床板は、ブーメラン状の板が上側にくるようにして、凸型の板が車体の裾から2mm引っ込む位置に半田付けします。これで妻板もしっかりしました。
 


5.妻板にウインドウシル/ヘッダーを半田付けしますが、物差しで長さを測って真ん中の部分に、マジックインキで印をしておきます。この印をした部分が正面の中央にくるようにして、まず真ん中で半田付け。さらに外へ外へと半田を流していき、コーナー部分を指で押し曲げて、最後に両脇の部分を半田付けします。


6.妻板に細かい部品を付けていきますが、ドアー脇のテスリはまだ付けません。正面とその脇のテスリは1.5mmピッチのものですから、2mmピッチのものと間違えないようにしましょう。テールライトは斜めに差し込むようにして半田付けをし、光軸がレールと平行になるように留意しましょう。


7.妻板を車体に組み合わせます。上下方向の合わせ目は、雨樋の細いエッチングの凸線が目安です。ドアーの裏側からその上下部分と後ろ側に半田を流します。側板から飛び出していたドアー上のヘッダーは、妻板側のヘッダーの上に乗るようになるはずです。これに屋根先を半田付けしますが、裾の部分を0.3mmほどサンドペーパーの上でこするようにして、削るようにして下さい。削ってみて現物合わせをして、削り過ぎないように注意しましょう。外観上目立つところですので、丁寧にカーブが合うように留意して作業しましょう。
 


8.まず妻板部分に雨樋を半田付けしますが、ウインドウシル/ヘッダーと同様に中央部にマーキングをしておくと良いでしょう。側板部分の雨樋は現物の長さを測り、それに合わせてカットして半田付けをします。ヘッドライト座の短い方の足は、その裏面が雨樋に当たるような長さにカットしておき、長い方の足を屋根の穴に差し込んで半田付けします。短い方の足も妻板に半田付けしておきます。ドアー脇のテスリを半田付けしますが、穴は0.4mmドリルでさらっておいて下さい。なお、長い方のテスリは塗り分けの支障になりますから、塗装後に接着するようにして、ここでは短い方だけを半田付けします。


9.運転台を作ります。エッチングヌキのパーツを切り離し、写真のように折り曲げて、椅子とブレーキ弁を瞬間接着剤で接着します。ブレーキ弁のボスの裏側に出た部分はツライチに仕上げておきます。これで上まわりは出来上がりました。


第2回
1.床板まわりの工作です。とは云っても床板に半田付けする部品はさしてありません。床板のスリットにステップを差し込んで半田付けをしたら、ちょうど真ん中くらいの位置に中段を半田付けします。


2.ブレーキシリンダーは組み立て式です。本体の前後部分に凹穴がありますが、ここをΦ1.0ドリルで軽くさらっておき、そこにランナーをカットしたテコを差し込んで瞬間接着剤で止めます。写真をよく見て、差し込む向きには注意して下さい。またテコの片方は写真のように先端部をカットしておいて下さい。


3.1.4x2mmビスで止めるモーターブラケットも含めて、床下機器を瞬間接着剤もしくは1.4x2mmビスで床板に止めていきます。
 


4.モーターカバーにはエンジンを瞬間接着剤で止めます。下側とサイドの突起帯がモーターカバーに引っ掛かるような位置で止めます。さらにコンプレッサーとマフラーも接着しておきます。


5.台車を組み立てますが、ギヤーボックス側の台車は別の袋に入っていますので、混ぜないで下さい。この台車の軸穴は少し大きくなっています。まず台車枠の排障器部分を左右各2個づつカットします。担いバネ部分を台車枠に組み合わせて半田付けしますが、上下を間違えないようにして下さい。ボスが下側にくるようにセットします。出来上がったらマクラバリとEリングを使って組み合わせます。非ギヤーボックス側のマクラバリには、逆転器を軸箱の位置と揃うように1.4x2mmビスで止めます。
 


第3回
1.客用椅子をプリント基盤に(配線が上になるようにして)瞬間接着剤で止めます。基盤には穴が沢山開いていますので間違えないようにして下さい。まずクロスシートを止めてからロングシートを止めると良いでしょう。


2.ギヤーボックスを組み立てます。ウォームギヤーにシリコングリスを少し塗って、動輪を組み込みながら1.4x5mmビスで止めますが、動輪の絶縁方向には注意して下さい。写真左の状態で手前側が通電側になります。動輪軸とギヤーボックスが接する部分にはオイルを垂らしておき、滑らかに回転することを確認しておきます。さらにユニバーサルジョイントの受け側を軸に押込みます。
 


3.ユニバーサルジョイントの中子も組み立てます。軸が目一杯入る所まで押込みますが、入りにくいようでしたら、オイルを一滴垂らすと良いでしょう。配線コードを半分にカットして、モーターに配線をします。コードの先端部にはラグ板を半田付けしておきます。モーター軸にもジョイントの受け側を押込んでおきます。最後にジョイントの受け側の割りが入っている方は、2個とも1mmほどカッターでカットしておきます。
 


第4回
1.さて塗装に掛かります。プリント基盤は全体を紺色に塗ります。モケットの感じにしたかったのですが、好みで他の色でも良いでしょう。塗りあがったら4ケ所のネジ穴部分を磨いて配線が出るようにしておきます。運転室はクリームに塗り、椅子だけは紺色にプラカラーで塗っておきます。計器盤もクリームに塗って、メーター部分には白を差しておきます。
 


2.黒く塗っておいた台車に動輪と付随車輪を組み込みます。軸穴に塗装は回っていませんか?ドリルでほじる場合には、動力側が1.4mmのドリルで、付随側が1.3mmのドリルで舐めるようにほじると良いですが、あらかじめ軸穴にはマスキングテープを貼っておくのも良いでしょう。写真で動力台車の手前側が絶縁車輪、付随台車の手前側が通電車輪です。床板を黒く塗ったら、プリント基盤を薄い両面テープで止めます。この時に、台車を止めるセンターピンを差しておくと位置決めが出来て良いでしょう。
 


3.台車を床板に止めます。動力台車は上からセンターピンを差し込んで、付随台車は下から差し込んで止めますが、ボルスターも違います。動力側は大きなものを、付随側は小さなものを使い、各々コイルスプリングを挟んで締め込みます。付随側は1.4mmナットでプリント基盤に止めます。
 


4.モーターを取り付けます。1.4x2mmビスでモーターブラケットに止めますが、その時にユニバーサルジョイントを差し込みます。モーターはマシマのシールが貼ってある方が見える向きにセットします。配線はプリント基盤の穴を通しておきます。その配線の先のラグ板をプリント基盤に1.4x2mmビスで止めます。
 


5.ここまできたら写真のようにパワーパックからの電源を直接モーターのラグ板に結び、車輪の回転のテストをします。軽くシャーッと回るようでしたらOKですが、原因を考えてみましょう。例えばギヤーボックスにストレスはありませんか?ギヤー軸を持って、車輪は軽く回りますか?ドライブシャフトの長さに問題はありませんか?それらを直して軽く回るようになったらモーターカバー(エンジン)を床板に止めましょう。この向きは外観図を参考にして下さい。
 


6.車体の色はマッハ模型の17番(スカ線クリーム)と80番(伊豆急ブルー)を塗ると近い色に仕上がるでしょう。最初にクリームを塗ってから塗り分けて、ブルーを塗りますが、クリーム色というのは色の乗りが悪いので、一旦ライトグレーに塗ってからクリームを塗ると良いでしょう。マスキングをして正面下部のエンドビームは黒く塗ります。通風器やヘッドライトは別にライトグレーに塗っておき、エポキシ系接着剤で止めます。ここまで出来たら、一応クリアーラッカーをサッと吹き付けて、トーンを整えておきます。


7.ヘッドライトレンズを接着してクリアーを、テールライトの反射板は赤く塗り、そのレンズ部分にはクリアーレッドのプラカラーを差しておきます。窓ガラスをプラ板などから切り出して貼ったら、計器盤をゴム系接着剤で止めます。運転台も妻板の床板にゴム系接着剤で止めます。下まわりとは1.4x2mmビスで止めて出来上がりです。
 


8.東野鉄道のオリジナルカラーはこのような色ですが、朱色とクリームの一般的な気動車塗装にしたり、貴方のアイデアを活かした塗り方にするのも良いのではないでしょうか?それが出来るのも、この手の気動車の楽しみなのですから。