「木曽のモーターカー改造コンテスト」入賞作品発表

「木曽のモーターカー改造コンテスト」総評



気が付けば100アイテムを突破してしまった当社の「木曽シリーズ」ですが、その製品群の中にあって、ひときわカラフルな魅力を放っているのが、一連のモーターカーです。

過去、当社は「木曽の酒井製モーターカー(実に木曽シリーズの第一作でした)」から始まって、「木曽の酒井製モーターカーU(No.4)」「木曽の富士重工製小型モーターカー(No.74・75)」「岩崎製小型モーターカー(No.64・65)」「岩崎製小型モーターカーU(No.69・71)」「岩崎製小型モーターカーV(No.72)」「木曽の酒井製モーターカーV(No.5・20)」「木曽の酒井製モーターカーW(No.14)」と発売してきました。その間には「助六の酒井製5tDLコンテスト」の参加賞としてプレゼントされた「木曽の酒井製モーターカー(No.18)」もありました。
 それらはまさに百花繚乱とでも形容したいほどのカラフルさで、己が姿を誇示するような個性を放っていました。
 これだけアイテムが揃ってきて一堂に並べてみますと、何かこれらを使って他の車両に変身させることができるのでは?といった気持ちになってきました(きっと皆さんはとっくにそうでしょうけれども)。



たまたま工藤芳夫氏が「木曽の酒井製モーターカーW(No.14)」の素晴らしい作例を、組立説明書およびホームページ上の組立講座で発表された姿を見て、これは面白い!きっと皆さんもこの遊びに興じて頂けるのではないか!と思ったのが、このコンテストのきっかけでした。
 そして応募の締切日。次々と送られてくる箱を開封するたびに、皆さんの模型工作に対する情熱、遊び心を満載した作品たちと対面するたびに、ボクが想像した以上のアイデアとその実行力に感服せざるを得ませんでした。
 それらは実に個性豊かで、甲乙付けがたい難問をボクに問いかけてきました。「どの作品を入賞作にするか?」という難問を。
 これは、事前に自分なりに決めておいた選考基準なのですが、アイデアの素晴らしさを第一に選ばせて頂こうという事。もちろん工作力が伴えば、それに越したことはないのですが、ある程度の工作力が作品で認められれば、アイデアの優れている方を優位に据えようという事です。従って、綺麗に仕上げられている素組み+αの作品よりも、膝を打つようなアイデアあふれる作品の方が優位になっていると御理解下さい。しかし、それも紙一重の差。お寄せ頂いた作品群を目の前にして、皆さんの思い入れと工作力や塗装のレベルの高さを改めて実感いたしました。モーターカーという同じような材料を使っても、中華料理にも洋食にも七変化させる面白さを持っている素材だ、ということをこれらの作品は如実に表しています。



 最優秀賞は「助六の酒井製5tDLコンテスト」に引き続いて、山下貴之さんの作品「遠山森林鉄道のボンゴくん」です。他の作品が上まわりに製品の影を残しているのに対して、この作品は完膚なきまでにそれを消し去っています。いくら曲面の少ないワンボックスカーとはいえ、1/87でボディーを自作してしまい、しかも塗装・仕上げともに全く非の打ち所がありません。これぞ改造コンテストの真骨頂と呼んでも良いでしょう。

 優秀賞も「助六の酒井製5tDLコンテスト」に引き続いて、高塚慎司さんの作品「屋久島タイプのモーターカー」です。φ4x8mmという極小モーターをボンネットに納めて果敢に動力化に挑んでいます。岩崎製小型モーターカーUの部品を有効に使いつつ、ここまで昇華させた技量は賞賛に値します。

 もう一人の優秀賞は、鵜藤茂樹さんの作品「城東電軌林務部工務課1号」。No.18のエッチング板を使いながらも、荷台部分の屋根を取り去り、軽トラ風にアレンジされています。エンジンを修理するために運んでいる最中というストーリーも楽しく、チェーンで吊ったアオリ戸の表情、きつめのウェザリングが良い雰囲気を醸し出しています。Bトレの動力を使いながら、それを感じさせない腕前は、なかなかのモノです。

 努力賞は三名。奇しくも酒井製Wを改造した作品が並びました。
 まず上條 宏さんの作品「簡易軌道風モーターカー」です。このコンテストが酒井製VとWの発売直後だったこともあって、応募された作品の中にこれらを改造したものが多かったのですが、その中でも上條さんの作品は「元の雰囲気を残しつつも、軽い工作で良い雰囲気作りをしている」という点で抜きん出ていました。塗装を始めとする、丁寧な仕上げも有効ポイントで、ラジエターグリルの桟を変えるだけでもこんなに感じが変わるのか、といった良い見本を提示してくれました。キット改造の好見本と云えるでしょう。

 努力賞の二人目は、平田邦彦さんの作品「丸平百貨店 販売車」。まさに氏の独特の世界が小さなジオラマで繰り広げられています。酒井製Wの荷台を行商のクルマに仕立ててしまう構想は、山奥で暮らす人々を支える命綱だったことでしょう。銀色の戸を開けると出てくるハシゴなど、緻密な工作力もその夢の実現に貢献しています。実際にこんなクルマがあってもおかしくは無いでしょうし、有ったらさぞや楽しいでしょうね。そんな夢を見させてくれる作品です。

 努力賞の三人目は、須々木裕太さんの作品「杉沢の酒井製大型モーターカー」です。秋田営林局五城目営林署杉沢森林鉄道に在籍していた、2台の酒井製大型モーターカーのうちの1台を模型化したものですが、氏はWを見たときに直感的に「これは使える!」と思われたそうです。上まわりでキットの部品を使ったのは前面と屋根板のみで、その前面も大幅に加工されています。キット改造というのは、独自の世界を作る楽しさもありますが、この作品のようにちょっとの加工で、全く別のプロトタイプに化けさせてしまう面白さもあることを提示してくれています。

 今回予定はしていなかったのですが、ユニークな作品が応募されましたので、「ユニーク賞」を設けることに致しました。
 ユニーク賞は二名。まず天羽貴裕さんの作品「高所作業車」です。あたかもサファリパークの作業車のような(失敬)いでたちですが、説明文を読むとなるほどと納得させられます。トンネルのツララ切りや、倒木などの撤去用車両のようです。屋根上の作業用テラス、正面窓の金網、後部のハシゴなど見所が満載ですが、敢えて書かせて頂けるならば、もう少し丁寧に塗装をしてやれば、上位間違いなしのアイデアだったと思います。

 もう一人は工藤芳夫さんの「M25ドラゴンワゴン」です。「助六の酒井製5tDLコンテスト」の時にもM151と題するジープのような作品を出品されたのですが、今回も同様のシリーズです。ボクはこの世界に弱いので、正直なはなし戸惑ってしまったのですが、説明文によれば第二次大戦米軍の戦車輸送車で「ドラゴンワゴン」というのがあったそうで、それになぞらえたそうです。奇想天外なアイデアの面白さと確かな工作力ということから選ばせて頂きました。



 今回は残念ながら入選は逸しましたが、寄せられた作品の中にはあと一歩といった作品も少なくありませんでした。
 黒川信浩さんの「木曽谷の郵便配達車」は酒井製Vをネタに側面窓を殆ど埋めてしまい(とても綺麗に)ドアを増設したもので、仕上げとともに惹かれるものがありました。
 増田秀長さんの「ファイヤー・モーターカー」はアイデアが素晴らしいです。運材台車に載せた水槽タンクを牽いたモーターカーにはポンプが載っています。でもこんなに重そうな水槽車を牽いたら、現場に急行できるのかしら(^^ゞ
 小埜寺哲雄さんの「木曽の酒井製モーターカーW改」や、豊田 昭さんの「酒井製モーターカーW改」は共に酒井製Wを加工したもので、前者は和洋折衷の雰囲気が面白く、後者は密閉タイプにした荷台で大きく雰囲気が変わる楽しさを教えてくれました。
 他にもストーリーが楽しい岸健志さんの「僕、お酒飲めないんですウ」や、飯塚完治さんの「屋久島風モーターカー」、中島敏博さんの「No.14改造単端」や12mmに改軌してしまった奥清博さんの「大井川鉄道井川線巡回用モーターカー」など、目を引く作品もありましたが、あと一歩及びませんでした。



 ただ主催者としてひと言ここで書かせて頂きたいのは、お寄せ頂いた作品の中に散見されたことですが、コンテストに出品されるのでしたら、やはり窓ガラスくらいは簡単なのですから、貼ってから出品して欲しかったという事と、走らせて剥げてしまった塗装はタッチアップでも良いので仕上げてから出品して頂きたかったという事。そのような姿勢が他の出品者に対する礼儀なのではないかと思いますが、いかがなものでしょうか?

 最後になりましたが、前回の「助六の酒井製5tDLコンテスト」の49両には及ばなかったものの、なんと42両もの作品をエントリー頂きましたことを、深くお礼申し上げます。最近は趣味が多様化したせいで、模型工作に割ける時間が少なくなったのか、作る人が少なくなってね、という業界の話題を払拭するような数だと思います。
 つい先日、ハンダ付けが終わった自分のモーターカーを風呂に持ち込んで眺めてしまったものです(湯船の中で見ると、とても綺麗に仕上がったように見えるものです)。指先を火傷しながら熱さに耐え、自分で作った作品は良いものです。今回エントリー頂けなかった貴方。次回は貴方の作品をお待ちしております。

なお、お寄せ頂いた作品は1月末まで当社ショウルームで展示させて頂くと共に、ホームページ上では製作メモとともに順次掲載させて頂く予定にしておりますので、楽しみにお待ち下さい。
                                        モデルワーゲン
                                          森川幸一




入賞者の発表(敬称略)


最優秀賞:山下貴之
 遠山森林鉄道のボンゴくん
  賞品:「木曽の酒井製7〜8tDL」(トータルキット)

 



優秀賞:高塚慎司
 屋久島タイプのモーターカー
  賞品:「木曽のキャブフォワードU」(トータルキット)

 



優秀賞:鵜藤茂樹
 城東電軌林務部工務課1号
  賞品:「木曽のキャブフォワードU」(トータルキット)

 



努力賞:上條 宏
 簡易軌道風モーターカー
  賞品:岩崎製小型モーターカーNo.69/71(トータルキット)

 



努力賞:平田邦彦
 丸平百貨店 販売車
  賞品:岩崎製小型モーターカーNo.69/71(トータルキット)

 



努力賞:須々木裕太
 杉沢の酒井製大型モーターカー
  賞品:岩崎製小型モーターカーNo.69/71(トータルキット)

 



ユニーク賞:天羽貴裕
 高所作業車
  賞品:岩崎製小型モーターカーNo.69/71(トータルキット)

 



ユニーク賞:工藤芳夫
 MC25ドラゴンワゴン
  賞品:岩崎製小型モーターカーNo.69/71(トータルキット)

 



なお、入賞者には作者名をエッチングした特製記念プレートと、
参加賞の特製エッチングプレート(木曽の酒井製モーターカーNo.18)が副賞として用意されます。



参加賞(順不同)
  特製エッチングプレート(木曽の酒井製モーターカーNo.18)

 
 
飯塚完治                        新井一雄



          
 
 
黒川信浩                        小埜寺哲雄



 
 
増田秀長                        山下貴之



 
 
奥 清博                        上條 宏



 
 
上條 宏                        小埜寺哲雄



  
  
山崎文啓                        岸 達志



 
 
奥 清博                        池井克己



 
 
奥田 浩                        新井一雄



  
  
千葉 誠                        横尾 浩



 
 
豊田 昭                        奥 清博



 
 
増田秀長                        中島敏博



 
 
奥田 浩                        川又一起



 
 
安達良樹                       土田健一郎



  
  
中島信人                        工藤芳夫






黒川信浩