皆さんの工作台から

工藤芳夫の世界/茶志内炭礦鉄道コハ1(雄別のコハ2)

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・・・町はまだ眠っている。
小夜別ロマン座の横、居酒屋が並ぶ通称"もぐら通り2への入口を過ぎ、
"つるや金物店"隣りの"喫茶・駅舎"の角を曲がると、茶志内炭礦鉄道・小夜別駅本屋正面に出る。
その向こうに、ひと足先に起き出した上り茶志内行きの列車の煙が、静かに町の目覚めを待っていた。
「遅刻!」小さく叫ぶと蛍は、迷わずもぐら通りへ駆け込んだ。
「オハヨ〜!寝坊したんかい?」と、"春ちゃん"から出てきた春美おばさん。
「行ってきま〜す!おばさん、おやすみなさ〜い!」
「はい、オヤスミ〜」あくびを噛み締めながら、蛍の背中に手を振る。
"桐子"の提灯を掠めるようにしてもぐら通りを抜けると、貨物ホームの裏手に出た。
その先の駅入口の前では、駅長が掃除をしている。
「駅長〜!ごめんなさ〜い!」と、柵を飛び越える。
「な〜んも!気イ〜つけるんよ〜!」駅長はホウキを振った。
・・・列車は、蛍を乗せると、ゆっくりホームを離れた。

  このようなくだりで始まる前述の記事「蛍物語」ですが、もりこーの直系継承派というか、いささか臭いですねえ。それもそのはず。もりこーの「幌別物語ーHOROBETSU GRAFFITI」を読んで感銘したというのですから。
  しかし、イメージだけではなく工作力はなかなかです。まず、トータルキットをしっかりと組んでいるという点。とかく自己流に解釈してしまい、自分流に組み上げてしまいがちですが、素直に組み上げるというのは、簡単なようでいて意外と難しいものです。その上で自分なりの味付けをしていく。ここいら辺のニュアンスは絵画にも似たところがあります。まずはデッサン。デッサンという基本が出来ていなければ、いくらピカソやゴーギャンを目指したところで限界があります。模型つくりも同じ。まずはトータルキットをちゃんと組む、これが大切です。
  工藤氏の場合、その上で様々な味付けをしています。屋根上のキャンバスの継ぎ目表現。これはディカールを0.75mmにカットして貼り、その上から塗装をしています。ドアーハンドルを自作。いかにも真鍮製のハンドルらしく見えています。製品ではクロスシートだったものをロングシートに改造。自分の車輛らしさの表現です。そして女学生。これは各種のパテで自作したそうです。さしずめ今風だったらルーズソックスでしょうか。