皆さんの工作台から

小池幹夫の世界/岩崎製小型モーターカーNo.72



こう云ってはナニですが、小池さんはまだ鉄道模型製作の初心者さん。メルクリンのZゲージを楽しんだり、ラジコン飛行機、はたまた軍艦の模型などを楽しんでおられたそうですが、半田付け工作は数年前から始められたというので、ビギナーと云わせて頂いても良いでしょう。
 その小池さんがひょんなことから当社のHPに接し、ナロー車輌の魅力にとり憑かれて製作したのがこのモーターカー。
 驚いたことに動力化をしてしまい、更にDCC運転用のデコーダーまで搭載してしまったのだから参ってしまいます。

小池さんが心掛けたポイントは、動力化によってシルエットを崩さないこと。モーターとウォームギヤーはほぼエンジンカバーに収まり、ギヤーケースも極力スリム化に留意して、サイドから見たときに透けるようになっています。
 もちろん動力化するだけでなく、ハイディテールアップ化にも着手。例えばワイパー支点に細密パイプを使用して回転部分を表現することや、幌の正面の留め金の表現など、枚挙に暇が無いほど。

CTエレクトロニックの片面基板超薄型デコーダーDCX74Dを幌の裏側に搭載し、ヘッドライト・バックライトはナノLEDにより点灯可能。配線は自作プリント基板により上下接点化(モーターラグ部左右と後部中央に接点あり)。ヘッドライトの配線は、Aピラー部に這わせ、バックライトの配線は幌後部を這わせて処理しています。
 ウォーム・初段ギヤーはモジュール0.2のメルクリン用ギヤーを流用、他のアイドラーギヤーは歯切り屋さんに特注で作らせた、というもの。モーターは携帯電話のバイブレーション用のφ4x8mmをエンジンカバー内に収納。更に動輪は3点支持になっているために、整備重量わずか12gながら、実に安定した走行が確保されています。

DCC運転の利点は同一線路上で複数のロコを別個に運転できること、ライト点滅が意のままにできることが頭に浮かびますが、もうひとつの利点は忘れられている方が多いようです。その第三番目の利点とは、通常の運転ではコントロールが難しいモーターも、DCCの持つEMF機能の恩恵によって、コントローラブルになることです。
 小池さんが使われた携帯用のモーターは1.3V仕様。もともと非常にトルクの少ないモーターです。もちろんこのようなコントロールが難しいモーターを使わざるを得なかった理由は、狭いスペースに納めたかったからなのですが、このようなモーターを11.8:1という少ないギヤー比でも、スロー運転が出来るようになったのはDCCのEMF機能のお蔭です。ということは、今までスロー運転のためには、調整の難しいモジュールの小さなギヤーを使い、限られたスペースと戦いながらギヤーを2枚重ねにして、ギヤー比を稼ごうとしたものですが、そのような苦労から開放される、ということも意味しています。
 これは「ギヤー比を大きくとる」という物理的な手法ではなく、「DCCのEMF機能を最大限利用する(利用できる設計をする)」という新たな手法の登場を告げるもの。これをカルチャーショックと云わずして、何をか云わんやです。

とてつもないナローゲージャーの登場に、心から拍手を贈りたいと思います。

       

 

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