キット組立講座

助六の酒井製5tDLX



今や当社の看板製品となった「助六の酒井製5tDL」。そのヴァージョンも進化してX(ファイヴ)を数えるようになりました。どこが進化したのか、なぜこのように魅力がある製品なのか、そんなところをこの組立講座から感じ取って頂ければ幸いです。



第1回
1.まずラジエターの加工からです。このラジエターブロックは標準的な仕様になっていますので、ボンネット裾の低い33号機・49号機・74号機は加工する必要があります。ラジエター脇の台形の部分に、ランナーから切り出した充て板を半田付けします。この充て板をガイドにしてヤスって整形しますが、49号機・74号機はコンプレッサーがあるので、充て板の裏側にさらに菱形の板を半田付けします。74号機の上角は充て板と同じようにヤスって丸くしておきます。
 


2.またこのラジエターブロックはいわゆる後期型の特徴を備えていますので、131・132号機以外の場合には加工が必要になります。写真で赤く塗った肩の部分に四角い突起がありますので、これをヤスって仕上げます。


3.ボンネットにラジエターを半田付けしますが、写真のようにボンネットを万力で咥えると両手が使えて良いでしょう。慎重に直角になるように半田付けしましょう。あとはボンネットに細かい部品を半田付けしていきますが、給油口・砂箱蓋・長いテスリ・エアークリーナーカバー・バックミラーステイ・バックミラー・裾の短いテスリ・排気管の順にするとやり易いでしょう。バックミラーは表裏を間違えないようにして下さい。ステイは前側に半田付けします(そうしないとミラーが見えなくなってしまいますので(^^ゞ)。
 


4.74号機の右側にはブレーキシリンダーカバーが付きます。その位置はテスリの間のちょっと前寄りです。写真を参考にして下さい。


5.キャブの組み立てです。まず前妻板にヒサシや窓枠などを半田付けし、後妻板には窓枠を半田付けします。74・93・131・132号機の窓枠は、ヒンジの部分をランナーから切り落とさないように注意しましょう。ヒンジは0.3mmほど残しておきます。33・49・93号機のヒサシはエッチングヌキのものは使わずに、プレス部品を指で曲げて使って下さい。74号機のヒサシは少し長過ぎましたので、1mmカットして片足保持で使って下さい。後妻板の窓枠は歪みがないか修正してから半田付けします。前後妻板が出来上がったら側板に半田付けして箱にします。側板の雨樋は33号機以外は「側板のエッチングで凸に表現された部分の上(キャブの幅方向の上)」にアングルの幅の狭い方を半田付けしますが、33号機は「側板のエッチングで凸に表現された部分の上(キャブの上下方向の上)」に半田付けします。写真は33号機です。49号機は屋根の上に上屋根を半田付けしてからヘッドライトを半田付けします。
 


6.131・132号機の前妻板にはタイフォンが付きますが、狭い部分に取り付けるため若干の加工が必要です。写真で赤く塗られた根元の部分を少しヤスっておき、取り付け穴をΦ0.6mmのドリルでさらって半田付けします。
 


7.ドアーはまず短い方の縁板を上下に半田付けしてから側面をツライチに仕上げ、それから左右の長い縁板を半田付けします。最後にハンドルを半田付けしてから裏側をツライチに仕上げておきます。そのドアーは側板の下部(鍵型に欠き取られた部分)で素早く半田付けしますが、その側板下部とドアー下部とはツライチになるように留意しましょう。作例では132号機の正面窓を少し開いた状態にしてみました。こんな動きがあるモデルは楽しいものです。出来上がったキャブとボンネットとを組み合わせて半田付けしまが、キャブに対してボンネットが直角になるように留意しましょう。
 


8.作例では132号機のボンネット後部を加工して「全開仕様」にしてみました。加工自体は前半分と同じ高さで糸ノコでカットするだけです。別売の「砂箱セット」に入っているボンネット枠を、ボンネットの継ぎ目とキャブ前妻板に半田付けします。このヴァージョンXでは後部窓を任意の位置で表現できるようになっています。エッチングヌキパーツセットから切り出した窓が、窓枠のレールに入るように現物合わせでバリを丁寧に仕上げます。華奢なパーツですので、歪ませないように注意しましょう。窓枠への固定は敢えて半田付けではなく、瞬間接着剤でOKでしょう。これで上まわりは出来上がりました。
 


第2回
1.下まわりは主台枠の組み立てからです。今回の主台枠は裏側を薄くえぐることにより、Wまでよりも厚みが増してスケール通りとなっています。それに伴い主台枠全面にあった床板も廃止されていますので、斜め上から覗いたときの充実感が増したのではないでしょうか?まず主台枠に軸受を半田付けします。ロストワックスとりわけロスト同士を半田付けする際は、半田を流す部分をキサゲブラシなどでよく磨いておき、ステンレス用フラックスを水で薄めたものを使用すると良いでしょう。


2.出来上がった主台枠をエンドビームと組み合わせてL字にします。落ち着いて直角になるように半田を流しましょう。更にこれを組み合わせて箱状にしますが、四方から透かし見て歪みがないように留意しましょう。エンドビーム上に付いている「エンジン始動用クランク受」は後部には必要ありませんので、台形になっている所から上はカットして仕上げておきますが、49・74号機の主台枠には前後方向がありますので、間違わないように注意しましょう。33号機以外はエアーホースを付けますが、裏側に出っ張った部分はカットして仕上げておきましょう。そして前後の床板を半田付けします。幅方向はロストの縮み具合によって一定ではないので、現物合わせでヤスッてピッタリと合うように仕上げておきます。
 


3.主台枠の前後にあるステップの端に合わせるようにしてドアーレールを半田付けします。49号機だけはL字型になっていますので、外観図をよく見て向きを間違わないようにしましょう。74号機だけは写真のようにパイピングが付きます。割ピンを使いながら主台枠に付けますが、上まわりと合わせてみて、パイピングの立ち上がり位置を確認しておきましょう。端は折り曲げてエアーホースの根元にくるようにしておきます。
 


4.33号機を除く号機にはコンプレッサーが付きます。49・74・93号機は左側に、131・132号機は右側になりますが、コンプレッサーの台座が半分掛かるような位置で主台枠に半田付けします。エアークリーナーの配管は、内側のそれをカットしておきます。今回は132号機を全開仕様にしましたので、別売の「砂箱セット」に入っているブレーキシリンダーを主台枠に半田付けします。上まわりを被せてみて、作動棒がキャブと干渉しないように留意しましょう。
 


5.エンジンはボンネット脇が低い33・49・76号機の場合は、残念ながらボンネットとエンジンステイとが干渉しますので、写真のように8mm幅でカットしておいて下さい(但し、全開タイプにする場合はそのままでも構いません)。排気管などに歪みがあれば修正しておき、写真で赤く塗った部分を平らにヤスります。主台枠に乗せてみて、エンジンが水平になるように後部ステイを曲げておきますが、前部にはラジエター後部の板が間に挟まりますので、その板厚を頭に入れておきましょう。これで良ければファンを瞬間接着剤で着けます。


 


6.出来上がった主台枠部分です。ここでひと息入れましょう。どうですか?今回のXは。今までのヴァージョンよりもグッと重量感が増してイイ感じではありませんか?眺めてばかりでは進みませんので、次はギヤーフレームの組み立てに入ります(^^♪。


7.左から順に・・・。まず片側のギヤーフレームに角型スペーサーを2個垂直に半田付けします。次にもう一方のギヤーフレームを半田付けして箱状にして、更に上方にスペーサー板を半田付けします。ここで一番大切な点は、歪みなく組み立てるということです。スペーサー板は水平になっていますか?いま一度確認をしておきましょう。


8.配線コードは6cmの長さになっていますので、これを2cmと4cmにカットして、集電ブラシに半田付けします。モーター軸にはウォームギヤーを瞬間接着剤で止めた軸アダプターを瞬間接着剤で止めますが、モーターの軸受に接着剤が流れ込まないように充分注意しましょう。モーター軸への差し込み具合は、写真のように軸端とウォームギヤーの端が合う位置まで差し込みます。ウォームギヤーを何か平らな台の上に立てて、瞬間接着剤を少量塗ったモーター軸を素早く突き立てると良いでしょう。さて、これで塗装作業に入ります。


第3回
1.まず当社の説明文に「プラカラーを塗ります」という言葉がときどき出てきますが、これは塗料の性質を利用したテクニックです。つまり塗料には強弱があって、ラッカー>プラカラー>エナメル系プラカラーとなっています(アクリル系は全く別の性質を持っているので、この話からは省きます)。つまりラッカーで塗った上にプラカラーを塗って、もし失敗してもプラカラーシンナーで消すことが出来ます。Hゴム表現などではみ出したときなどに便利ですね。ただ残念なことにプラカラーの被膜は弱いので、触っているうちに剥がれてしまいます。しかし、この上からクリヤーラッカーを吹き付けておけば、その心配もなくなります。「クリヤーでオーバーコートしておきます」というのはそのことですが、このクリヤーにももうひとつの利点があります。フラットベースを混ぜた艶消し塗料というのは被膜が弱くなってしまいます。ですから極力艶ありの状態で塗装を進行していき、最後に艶を揃える意味で、フラットベースを少し混ぜて色調を落ち着かせたクリヤーを塗ると良いのです。ウェザリングはこの後ですると良いでしょう。

2.それでは上まわりから解説していきましょう。見本では33号機を最末期のオレンジ+紺色に、49号機をエメラルドグリーン+マルーンに、74・131・132号機を王滝色に、93号機を末期のクリームイエロー+マルーンで、ボンネットや屋根上をグレーに塗ってみました。写真はそれぞれ下塗り処理をして一回目の塗装を終え、マスキングをしたところです(ウッカリしてしまい、このあと93号機のボンネット上もマスキングをしましたが・・・)。今回は当社塗装工場からのアドバイスで、従来のようにストライプをディカールとせずに塗装でする方法に変更しました。実際にはこの方法の方が仕上がりはスッキリしますし、当然のことながらストライプの色も合いますから。この方針に従うと塗装の手順も変わってきます。33号機は屋根の黒を活かすために全体を黒く、49号機は上まわり裾の色を活かすために全体をマルーンに、93号機は屋根上のボンネットのグレーを活かすために全体をグレーに、74・131・132号機は上まわり裾&ストライプの色を活かすために(132号機は屋根上のためにも)全体を黒く塗ります。そして活かす部分をマスキングして二回目の塗装に移ります。ストライプの幅はマスキングテープを0.7mmほどの幅に切り出しました。なお、全開にする場合はキャブ前妻面の枠の内側は黒くなりますので、そのことをお忘れなきよう。左から順に33・49・74・93・131・132号機です。


2.2色目を塗ったらタイフォンやヘッドライトケース・排気管やラジエターを黒く塗り、131号機のバックミラーの前は白く塗って後ろ側は塗装を剥がします。Hゴム窓には黒か濃いグレーを差しておきましょう。ヘッドライトレンズとリムを組み合わせたものをヘッドライトケースにエポキシ系で接着します。この段階でなぜレンズを入れるのかというと、もしも接着剤がはみ出したとしても、クリヤーをあとで吹き付ければ目立たなくなるからです。


3.別売のアルプスモデル製インレタ(木曽B)を使ってナンバリングをしてから、クリヤーでオーバーコートします。ボンネット用ウエイトは黒く塗ってから接着しますが、塗る前に写真のように前側を斜めにあらかじめカッターで落としておいた方が良いでしょう。全開の場合は砂箱を極力後ろに接着するようにします。
 


4.計器盤は裏側の出っ張りを削ってから王滝グリーンに塗って、メーターに白を差しておき前妻板に接着します。エンジンはラジエター後部の板にエポキシ系接着剤で止めますが、ステイは93・131・132号機はボンネット脇の斜めの部分に、それ以外はウエイトにも接着しておきます。この際にエンジンが傾かないように留意しましょう。


5.出来上がった上まわりです。このあと窓ガラスをプラ板などで切り出して貼り、最後にレンズにプラカラーのクリヤーを差して画竜点睛としますが、乾くと若干縮みますので、乾かしては塗りを3回ほどやると、まさに生きたレンズになります。


6.下まわりは該当する色に塗り、コンプレッサーが付いている49・93号機はプラカラーで黒く塗っておきます。74・131・132号機は主台枠も黒ですからその必要はありませんが。話がずれました。別に黒く塗っておいたカプラーに短いピンを止め、これを長いピンで主台枠に止めますが、それぞれは少量の木工用瞬間接着剤を利用すると良いでしょう。木工用ですと乾くのにちょっと時間が掛かるため「カブリ」もなく良いからです。作例ではタミヤの「ウェザリングマスター」の「オイル」を使ってドライブラシ処理してみました。


7.ギヤーフレームは黒く塗り、動輪の軸箱が入るU字型の部分はカッターで塗料を剥がしておきます。大きなアイドラーギヤーをプラ製アイドラー軸で止めますが、間に細かい部品が入りますので、なくさないように注意しましょう。集電ブラシ両端のポチっと出た部分は外側を向いていますか?Eリングで止めてみてギヤーの回転が固い場合には、ギヤーフレームが少し歪んで組み立ててしまった証拠ですので、大きなアイドラーギヤーの側面をカッターで少しケズって対処しましょう。ヤスリですと摩擦熱でギヤーにバリが出てしまうので、ヤスリで削ってはダメです。小さなアイドラーギヤーには金属製のアイドラー軸を使います。


8.動輪は2種類あり、ギヤーが厚い方が可動軸動輪です。動輪の軸箱にはオイルを僅かに差しておき、ギヤーフレームに組み込みますが、可動軸の方は前側になるように、しかも軸箱の向きに注意しましょう。ちゃんと動輪は上下方向に可動しますか?そうでなければ軸箱を回転させて、前後方向ではなく上下方向に可動するようにセットしましょう。集電シューは動輪の裏側を軽く擦っていますか?あまり強く当たらないように注意しましょう。動輪押さえ板は1.4x2mm小頭ビスで止めますが、小さいアイドラーギヤーのEリングは開口部が下側になるようにしましょう。


9.ギヤーボックスと台枠・モーターを組み合わせます。前の長穴はできるだけズレないようにしましょう。ギヤーの噛み合わせを調整しながらモーターは1.4x4mm小頭ビスで止めますが、その際に動輪押さえ板を一旦外すとやり易いでしょう。モーターは文字を後ろ側(+端子は左側)にセットしておき、写真のように抵抗を間に入れて半田付けします。
 


10.上まわりとは台枠用ウエイトを挟んで1.4x5mm大頭ビスで止めて出来上がりです。最後の仕上げとして、排気管はタミヤの「ウェザリングマスター」の「アカサビ」を使ってドライブラシ処理してみました。さあ、貴方はどんな風景でこの役者たちを演出しますか?














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