キット組立講座


沼尻のDC12


ガソ101から出発した当社の「シリーズ沼尻」にディーゼル機関車が登場。このシリーズもいよいよ佳境に入ってきます。HOナローのDLと云えども、その密度はまさにOナロー並み。この製品を手にされた方は、恐らくその密度の高さに驚かれることでしょう。そんな製品の魅力をWEB上でお楽しみください。


第1回
1.まず、ボンネットにラジエターカバーを半田付けします。ロストワックスの半田付け全般に云えることですが、半田付けする部分はキサゲ刷毛などで磨いておき、ステンレス用フラックスを水で3倍くらいに薄めたものを併用して半田付けをすると、綺麗に半田が流れるでしょう。コテの熱量は60W、セラミックヒーターでしたら23Wもあれば充分です。ラジエターカバーを半田付けしたら、グリルを半田付けしますが、エッチングヌキのこのパーツ、あえて裏返して半田付けをすると線が細くて良いでしょう。但し、外周部は綺麗に仕上ておくことを忘れずに。


2.細かい部品をボンネットに半田付けします。前から順に説明すると、ヘッドライト・標識灯の足は位置決めが出来る程度に短くカットしておきます。点検扉ハンドルは非常に細かいですから、半田は最小限に留めて、間違っても「半田漬け」にならないよう注意。砂箱蓋はヒンジが表現されている2本の突起がセンター側になるように注意。サイドのテスリの前方の足も短くカットしておき、突き当てた時にボンネットとの隙間が0.5mm程度になるようにすると良いでしょう。各々の部品の足は、ボンネットの内側に出た部分をカットしておきましょう。


3.ボンネットの次はキャブです。前妻板にヒサシを付ける場合は、窓上のエッチングで凸表現された部分に、ヒサシの足が乗るようにして半田付けします。下の足の根元が妻板に密着するようにすれば、ヒサシの傾斜角度は出るでしょう。ワイパーもこの段階で半田付けしておき、裏側に出た足はツライチにヤスッておきます。窓ガラスを貼ったりするような部分のテスリは、このように裏側を仕上ておくと、窓ガラスを貼るときに楽になります。


4.屋根と一体になった側板と前後の妻板を組み合わせます。妻板と側板との下面が合うようにして、その部分をチョンと半田付けしてから、てっぺんの部分で半田付け。様子を見て良い感じでしたら、じわっと全体を半田付けします。ちなみに窓枠の部分はエッチングで0.1mm出ていますから、出ていない妻板部分が側板の端と合うように留意します。


5.後妻板には上下取付板を半田付けしますが、その両端部分を現物合わせでしっくりと入るようにヤスッておきます。ネジが切ってある部分が妻板の下面と合うように留意しましょう。そして細かい部品を付けていきます。雨樋は側板の肩の部分のエッチングで凸表現されたところに引っ掛けるようにして位置決めをし、水平に半田付けします。ドアー脇のテスリの足も裏側はカットしておきましょう。縦雨樋は引っ掛け易いので、まだ付けません。
 


6.屋根裏にはウエイト台を半田付けしますが、凸部分を後妻板に突き当てるようにします。最後に縦雨樋を半田付けしますが、このような部分は引っ掛けたりしやすいので、しっかりと半田を流しておきましょう。
 


7.ボンネットとキャブとを組み合わせます。この部分は「ほぞ組み」になっているので、作業は簡単でしょう。但し各々の下面が合うように留意することと、少しの半田でしっかりと固定すること。あまり半田を流し過ぎると、表側に半田が流れてしまい、綺麗に仕上るのに苦労しますから。しかし、この部分に半田が流れていないところがあると、塗装をしてから案外目立つものです。半田が多くならないように、全体に流すようにしましょう。ここで一気にキャブインテリアも組み立ててしまいます。各々の足を穴に差し込めば良いので、作業は楽でしょう。裏側に出た足は、ツライチに仕上ておきます。前後左右の窓枠やドアーは塗装後に接着しますので、この段階では半田付けしませんが、ドアーにハンドルだけは半田付けしておきます。ランナーは塗装の便を考えて、そのまま残しておきます。ドアーの裏側は平らにヤスッておきましょう。
 




第2回
1.ここからは下まわりの工作です。ギヤーフレームは角型スペーサーで箱型に組みますが、歪みがないようにすることが重要です。ここで歪んでしまうと、動きに直接影響しますので、何度もやり直す覚悟で落ち着いて作業しましょう。仮に動輪をセットしてみて、軽く廻ることを確認しておきましょう。廻らなければ(もしくはギヤーフレームに動輪がスッと入らなければ、歪んでいる証拠です。3つ開いている穴が線対象の位置になるよう表裏に気をつけます。なお、動輪をセットして押さえ板をビスで止めてみて、動輪が上下動するようでしたら、ギヤーフレームの下側を少しヤスります。そののちに前後部分にコの字型のフレームを半田付けしますが、突起がある方がギヤーフレームの穴が少ない方にきます。この部分も上部が「ほぞ組み」になっているので作業は楽でしょう。ここまできたらカプラー台の丸い部品を半田付けしますが、この部品はなるべく両端に寄るように半田付けします。
 


2.細かい部品を半田付けします。まずブレーキシリンダーを半田付けしてから、ブレーキテコを半田付けしますが、テコの先がシリンダーの先端部に入るように留意します。反対側のテコも同様の角度でセットします。テコの足は短くカットしておき、ギヤーフレームの内側に出ないようにしておきましょう。排障器の足も小穴に差し込んで半田付けします。
 


3.動輪押さえ板の穴にはブレーキシューの足を差し込んで半田付けします。


4.次は床板まわりの工作です。床板は2枚重ねです。厚い方は薄い方よりもひと周り小さいので、前後左右均等になるようにして組み合わせますが、厚い方は表裏を間違えないように要注意。分解図をよく見てください。中央の凸型の穴の左右部分・四角い穴は半田シロになっていますので、その部分や外周部分で半田付けをします。外周の段差部分にはコの字型のパーツを半田付けします。大きいのと小さいのがあります。その継ぎ目にはキャブの縦雨樋がきて隠れてしまうはずですから、その仕上に細心の注意を払うことは必要ないようになっています。
 


5.ここで是非やって頂きたい作業がこれです。エンドビームはプレス部品なので、どうしても「ダレ」が出てしまいます。平ヤスリや平らな板の上に置いたサンドペーパーの上で、斜めの部分と平らな部分を仕上てやると角も出て良いでしょう。
 


6.床板に細かい部品を半田付けしていきます。写真とは異なりますが、まずエアータンクの土台以外の部分を0.5mm程(両端の配管受が半割になるまで)ヤスって下さい。このままでも大丈夫とは思いますが、ロッドピンとの干渉を避けるためです。前ステップ・エアータンク・後部ステップを最初に半田付けします。各々の足は短くカットしておき、床板から部品が浮かないようにしましょう。なお、エアータンクはくれぐれも傾かないように注意して下さい。これが傾いてしまうと、動輪をセットしたときにクランクピンが干渉してしまいますので。パイピング部品は曲げてありますが、ある程度は現物合わせで長さを調節する必要があります。どの配管がどこに付くかは、分解図をよく見て間違わないようにしてください。写真のようにまず、左前と右後ろの配管を半田付けしてチリコシも半田付け。その後に残りの配管をすると作業しやすいでしょう。エアータンク前方には左右各1ケ所に割ピンで支える部分があります。右側の割ピンは全高4.2mmに左側は4.8mmにカットして床板の穴に差し込むと、ちょうど良い長さになるでしょう。ノギスをお持ちでない方は、4mm強と5mm弱といった感じでも良いと思います。左右配管の前部両端はギヤーフレームの小穴に入るようにしますので、ギヤーフレームをはめてみて具合を見ます。小穴に差し込んだ先は短くカットしておきましょう(ここにカプラーが入るので、干渉しないように)。最後に上面に握り棒を半田付けしますが、これも足を短くカットしてから半田付けをします。これで配線以外の半田付けは完了です。
 


第3回
1.さて塗装です。ネジ穴のあるようなものは、そこに竹串をネジ込んで塗装をします。窓枠は白く塗ってから接着しますので、写真のようにランナーに付いたまま、割り箸に強力両面テープを巻いたものなどに固定して塗ります。


2.上まわりとドアー、床板まわりをMWC-16沼尻のDC12用ダークブルーで、ギヤーフレームまわりとカプラーを黒に塗ります。ダークブルーを塗ったら、窓まわりのエッチングで凸になった部分に白を差します。正面をヒサシ付きにする場合は、それで隠れてしまう部分は塗らなくても目立たないでしょう。ドアーの窓枠はマスキングテープでマスキングしてプラカラーの白を塗りますが、筆塗りでも大丈夫でしょう。インテリアは全体をMWC-11 建設省グリーンに塗って、椅子のモケットを紺色に、ブレーキ弁ハンドルを金色に、チェンジレバーの握りを黒に(誰か水中花のグリップみたいにしませんかネ)、メーターの凹部に白を差します(妻楊枝などで塗料を置くようにすると良いでしょう)。
 




3.ワイパーの塗装を剥がしておき、白く塗っておいた窓枠とドアーをゴム系接着剤で接着します。側面の窓枠は半開きになった状態と、閉じた状態とがありますので、お好みでお選びください。エポキシ系でも良いのですが、このような垂直面で、しかも引っ掛かりの無い部分の接着にはゴム系の方が楽です。見本では別売の「アルプスモデル製沼尻用インレタ、磐梯急行社紋インレタ」を使いました。蓄電池箱やエアータンクの標記など、出色の出来ですから是非チャレンジしてみてください。沼尻鉄道時代にする場合は、窓下にSのマークの(スーパーマンみたい)社紋を貼ります。ナンバーは1と2が用意されていますので、お好みでどうぞ。この段階で全体にクリアーラッカーを吹き付けて艶具合を整えます。ヘッドライトケースの底部分には銀色を差しておき、リムとレンズをエポキシ系で接着します。レンズ部分にはプラカラーのクリアーを、標識灯の底には黄色を差してからクリアーイエローを何度か差してモッコリさせます。レンズ部分にクリアーを差すと差さないとでは雲泥の差ですから、是非やってみてください。
 


 


4.ひと通り塗装を終えたら、プラ板などで窓ガラスを貼って、上まわりにウエイトを載せます。黒く塗っておいたウエイトを、ラジエターカバーの部分には半分頭を突っ込んでエポキシ系で接着、キャブ屋根には1.4x2mmビス(大頭)で止めます。但しDCC用のデコーダーを搭載する場合には、ウエイトの代わりにそれを強力両面テープで貼り付けます。
 


5.床板にはモーター止板を1.4x2mmビス(大頭)で止め、モーターをこれに1.4x2mmビス(大頭)で止めます(モーターは端子の+が右側になるようにセットします)。ウォームギヤーを1.4mmイモビスで止めます。(再生産品では仕様が変更になり、ビス止めではなく瞬間接着剤で接着する方法になっております)そののちにウエイトを間に挟みながらインテリアを床板に1.4x4mmビスで止めます。見本では別売の機関士を乗せてあります。集電ブラシのラグには配線コードを半田付けして、写真のように黒いラッカーを塗っておきます(床板にセットしたとき、もしも床板と接触してもショートしないように)。なお、DCC用デコーダーを搭載した場合には、機関士を乗せることは出来ません。
 


6.ギヤーフレームの動輪軸箱が入る部分の塗装は剥がしておいてから、アイドラーギヤー2個をセットします。それから動輪の位相が合うように留意しながらギヤーフレームに落とし込んでから、1.4x2mmビス(大頭)を使って押さえ板で止めます。軽く動輪は廻りますか?OKならばサイドロッドを付けます。なおサイドロッドの第一・第三動輪クランクピンが入る長穴は、ヤットコなどでほんの軽く潰して穴を小さくします。その後に第二動輪クランクピンのネジ部分をニッパーなどでカットし、サイドロッドに半田付けして裏側をツライチに仕上げておきます。動輪とロッドの間にワッシャを挟みながら六角ビスで止めますが、ロッドをギュっと締め付けてしまう寸前までネジ込みます。機関車が小さい上にスケールの車体幅で設計されていますので、寸法的にシビアなものになっています。
 


7.コードが半田付けされた集電ブラシを、2種類のワッシャと1.4x2mmビス(小頭)で止めて、コードを床板の小穴を通し、モーターの端子に半田付けします。コードはクロスしないようにします。右の写真はこの状態を下側から見た(判り易いように動輪は外してあります)ところです。
 


8.最後に上まわりと下まわりとを組み合わせますが、前は1.4x3mmビスで、後ろは1.4x2mmビス(大頭)で止めます。それからピンを接着しておいたカプラーを1.4x4mmビスで止めて出来上がりです。


9.再生産に伴いエンドビームの警戒ゼブラが追加になりました(このディカールは別売もしておりますので、ご希望の方は御連絡下さい。1両分で\500です)。これは水貼りディカールですので、写真のようにカッターで切り出した後に水に漬けて、車体に転写します。乾いたらクリヤーで吹き付けてコーティングし、軽くウェザリングすると良くなるでしょう。
 














「長者丸」こと中部浩佐さんに早速組んで頂きました。

「軽便モジュール倶楽部」や「木曽モジュール倶楽部」でご活躍中の長者丸さんにテストショットをお渡ししてインプレッションを書いて頂きました。彼は根っからのナロー好きで、もりこーと知り合ったのも、氏が中学生時代にガクランを着て「珊瑚」に通っていた頃でした。果たしてそんなナロー中年はこの製品をどう見たでしょうか?



写真をクリックして大きいサイズで御覧ください。



 ご紹介にあずかりました、長者丸(諜邪丸)こと中部と申します。
 「皆さんの工作台から」すら(凄ウデの皆さんの前に怖気づいて)未デビューの私が、こんなところに出てきていいんでしょうか?とオロオロしておりますが、どうかお付き合いの程を…
 HOナローの軽便のロッド式DLといえば、個人的に思い出深いのはかれこれ30年のロングセラーを誇る珊瑚のDC12です。それとの出会いは、まさしくモリコーさんが店にいらして私がガクラン着てた頃なのですが、当時はあいにく正規のキットが品切れの時期でもありました。そのかわり、店頭にフレーム孔の狂ったジャンク品が二束三文で売りに出されたことがあり、それを買い込んできて、なんとか走るようにすべく中坊なりに悪戦苦闘したものです。しかし、未熟なウデとキャラメルの性能が崇って、“動く”ようにはなれど、マトモな編成のミキストを牽いて運転を楽しめるレベルには到らずじまい。そんなこともあり、わが軽便においては長らくDLは空白の状態が続いていたのでした。
 しかし時は流れ流れて20年余、ワーゲンが沼尻シリーズの製品化を宣言したことによって、にわかに期待は高まりました。ディテールも走りも今日的レベルになった軽便ロッド式DLがついに手に入る!と。

 今回こういうお話をいただき、一足早く届いたキットの函を空けてパーツをぶちまけて最初にしたことは、いにしえの珊瑚の製品とイロイロ比べてしまうことでした。ディテールの進化もさることながら、珊瑚のはモーターの関係でじつは車体巾が広かったことなどに今更ながらに気づき、思わず感慨に耽ってしまいます。
 何にもまさる喜びは“抜けている”全金属製のスポーク動輪とブレーキシュー!さらに、ワーゲンの製品であるということは、これらが保守パーツとしても堂々と入手できるという意味でもありまして、工作派のナロー/N古典機のファンには大いなる福音ではないでしょうか。保守部品なんていわず、ぜひ正規の分売パーツとしていただきたいくらいです。また、集電ブラシが、今までの他機種(酒井5t、ホイット、C4)にくらべて長いことも作用して当たりが柔らかくなっているのもうれしい点です。

 


 組立ての作業は、基本的にはワーゲンの製品に慣れた方なら造作もないことでしょう。ただ、下回りに関してはロッド式だけにシビアな部分もあります。ギアの位相合わせはもちろん、殊にロッド廻りは説明書にもありますが、回転中の引っ掛かりやショートを防ぐため、周辺のクリアランスに充分留意して工作を進めることが肝要です。また、排障器の取り付け位置がデフォルトでは低すぎてレール面スレスレなので、勾配のあるレイアウトを走らせる場合、導入部でショートする恐れがあります。走りを重視されるなら、位置を高めに直すことをお勧めします。
 残念な点を挙げるとすれば、ロッドが太すぎて少々不恰好なことでしょうか。これは今後の改良に期待したいところです。
 とりあえず完成させたこのDC12、目下アナログの状態ですが、走りはスローも効いて上々、パワーについても平坦線ではブラスのボギー客車8輛を牽けましたから、セタの積車を沢山交えたミキストもしっかり再現可能でしょう。上り勾配だとR282・3%で客車3輛までですが、キャブインテリアを犠牲にしてウェイトを増せばもうすこし向上は期待できそうなので、これからDCCデコーダの搭載と併せて、ウェイトの増量を図ってみたいと思っています。
 作例の塗装は、わが軽便の標準色である湘南グリーンが基本ですが、一色塗りだと緑の濃い風景の中では埋もれてしまいそうなので、端梁とデッキ側面は警戒色を兼ねてイエローに、屋根も変化をつけるためグレーにしてみました。
 最後に白状しておきますと、実はマヌケにも乗務員扉の位置を間違えて付けてしまっています。本来はドアノブが前寄りになりますので、皆様もご注意を…