キット組立講座

木曽の富士重工製小型モーターカー No.74 & 75
モーターカーは保線作業や巡視など、様々な用途に使われましたが、この車輛はそれらの中でも小型に属するタイプで、開放型+幌ではなく、鉄製の側板や屋根で囲われた密閉式なところが特徴でした。

写真をクリックして大きいサイズで御覧ください。

第1回
1.最初に側板にドアーを半田付けします。ドアーは74号と75号の両方が入っていますので、間違えないようにして下さい。窓の小さい方が74号、大きい方が75号です。また、前後で幅が違いますので、これも間違えないように注意します。幅が狭い方が前用、広い方が後用です。但し、エッチングシートには各々明記してあるので、ランナーを切り落とす際に混同しなければ、まず間違えないでしょう。
 まず、前用ドアーを側板に半田付けしますが、側板の前端部とドアーの前端部を合わせて、ドアーの上下で軽く半田を流します。位置が良ければ側板とドアーの間にフラックスを染み込ませて、側板の裏側の窓の部分から半田を染み込ませます。次に後のドアーを半田付けしますが、位置決めはドアー間のエッチング凸線とドアー後のエッチング凸線で規制されますので、垂直に気を付ければ難しくはないでしょう。前と同様に半田付け作業をします。
 この作業での注意点は、ドアーの裏側から半田を流す際に、窓枠の裏側に半田をボッテリと残さないようにする事。あとで窓ガラスを貼る時に苦労しますので、要注意です。
 次にコーナー部分前に縦雨樋を半田付けしますが、位置は側板上部の水平がカーブで立ち上がる部分から垂直に降ろす感じでセットします。後妻の中央部でエッチング凸線の下にトランクハッチを半田付けします。上下を間違えないようにして下さい。L字の模様がある方が上です。

2.後妻板の内側に上下止板を半田付けします。ネジ穴が切ってある方を、車体の裾とツライチにして、アングルの上の方から半田を流します。次に屋根板を車体と合わせて半田付けします。屋根板にはアングル状の突起があるので、作業はやり易いでしょう。なお、75号はバックライトを削り取ってしまいます。そして、前面を組み合わせて半田付けします。これも屋根板同様に突起があるので、簡単でしょう。ワイパーは短い方を1mm程カットして、屋根板の穴に差し込み半田付けをします。

3.箱状に組み上がったら、400番位のサンドペーパーの上で車体の裾を仕上げます。僅かに前面が出っ張っているはずですので、裾が均等に削れて光るようになったらOKです。さあ、これで上まわりの組み立てが完了しました。ライト類は塗装後まで無くさないように袋に入れておきましょう。

第2回
1.下まわりの組み立てです。床板の角穴にフレームの突起を差し込み半田付けします。垂直度に留意してください。なお、床板には表裏がありますので、注意しましょう。見分けるポイントは、タイフォンが付く板端の切り欠き部分です。次にマフラーを半田付けします。床板の穴にボスを差し込んで半田付けしたら、パイプをフレームに沿わせるように曲げて、軽く半田で止めておきます。

2.床板にタイフォン取付板を半田付けします。前述のように、床板には切り欠きがありますので、位置決めには迷わないでしょう。この板の穴にタイフォンを差し込んで半田付けしますが、ラッパが少し下がり気味にすると感じが良いでしょう。ラッパ根元の半球の部分が上にくるようにします。写真は左から順に、この作業の流れを示しています。ここまで出来たら、床板の上面を車体と同じように、サンドペーパーの上で、ツライチに仕上げておきます。

3.今度は床板に台枠を半田付けします。床板の切り欠き部分に、台枠の突起がはまりますので、位置決めは容易でしょう。床板の上面と台枠の上面とがツライチになるように組みます。なお、台枠は長いロストなので、歪んでいる場合があります。透かして見て一直線状になっている事を確認してください。台枠の前後上部にバンパーを半田付けします。この部品は中央のカプラー部分で折れ易いので、取り扱いには注意してください。さあ、これで下まわりの半田付け作業は完了です。塗装に移る前に、ウエイトの一部を写真のように斜めに削っておいてください。

第3回
1.塗装に掛かります。写真のように塗装をするパーツの穴などに竹串を刺して、それを発泡スチロールに刺しながら作業をすると、はかどるでしょう。

2.床板は黒く塗りますが、塗装後にタイフォンのラッパを1.0mmと1.4mmのドリルで揉んで、塗装を剥がすと良いでしょう。

3.モーター軸にプーリーを瞬間接着剤で接着しますが、軸受部分にはオイルを注しておくと接着剤が回り込まないでしょう。ここで注意することは、プーリーの位置です。モーター止め板を合わせてみて、その板厚分だけ隙間を空けます。モーターのラグ板には半分にカットしたコードを半田付けして、集電シューに配線をしますが、写真のようなコーナーの部分に半田付けして下さい。集電シューの向きにも注意して下さい。

4.下まわりの組み立てです。まず、集電シューを2種類の絶縁リングと1.4x2mmビス(小頭)で床板に止めます。次にウエイトを1.4x2mmビス(大頭)で床板に止めます。そして、モーター止め板をやはり1.4x2mmビス(大頭)でしっかりと止めます。

5.モーターを止め板に1.4x2mmビス(大頭)で止めますが、プーリーが接触しないように留意して下さい。プーリの付いていない車輪をフレームに組み込み、止め板で1.4x1.3mmビスを使って止めます。車輪の軸箱にはオイルを指しておいて下さい。そして、集電シューが強く当たり過ぎないように調節して下さい。車輪に触るか触らないか位にするのがベストです。この部分は重要ですので、念入りに調整して下さい。

6.ベルトを掛けたプーリー付き車輪の軸箱にもオイルを注しておき、ベルトを角穴に差し込んで、モーターのプーリーに掛けます。その時に向きを間違えないようにして下さい。逆に掛けると逆走します。そののちに押さえ板で1.4x1.3mmビスを使って止めます。モーターに電源を繋ぐと、ベルトは左右に動きますが、特に問題はないと思います。磨耗した時の予備として、ゴムベルトは1個余計に入っています。これで下まわりは出来上がりです。

第4回
1.車体の塗装です。まず全体に一色目を塗ります。市販の塗料で最も近い色として、74号はマッハ模型の17番(スカ線クリーム)、75号は一般的なライトグレーです。次に2色目を塗るためにマスキングをします。外観図を見ながらする訳ですが、ディカールの中心に塗り分け線がくるようにすると、比較的神経を使わなくて良いでしょう。74号75号共にライトグリーン・近似色としてマッハ模型の62番(京阪若草)を塗ります。この時に窓の内側もマスキングするのを忘れないようにして下さい。

2.74号は屋根を朱色に塗りますが、市販の塗料ではマッハ模型の103番(キハ40系)が一番近い色でしょう。塗装が終わったらディカールを貼ります。ディカールは2種類あり、2本線のものが74号、1本線が75号用です。まず、外周ぎりぎりをカッターで切り抜き、小皿に入れた水に浸してフィルムを浮かせます。これをピンセットで軽く摘まんで、車体に載せていきます。この段階で出来るだけ車体との間に隙間が出来ないようにしておき、水分をティシューで吸い取ります。そののちに、ソルバセットなどの膜軟化液を染み込ませていきます。この段階で触るのは厳禁ですが、ドアーの縁などは面相筆の先で軽くつついて、馴染ませるようにします。正面の丸い穴部分は、爪楊枝などの細いもので注意深く穴を開けます。

3.Hゴム窓にプラカラーで黒を差して(プラカラーを使うのは、もしはみ出したら専用シンナーで修正できるため)から、クリアーラッカーを吹き付けてオーバーコートをしておきます。そして軽くウェザリングをしたのちに、ライトリムとレンズを組み合わせておいたものを、車体にエポキシ系接着剤で止めます。これが乾いたら、前面右下と背面右下の小さなレンズにクリヤーレッドを、他のレンズにはクリヤーのプラカラーを差します。プラ板を使って窓ガラスを入れます。下まわりと仮に組み合わせてみて、隙間の部分に鉛板を適宜カットして、両面テープやゴム系接着剤で貼り付けていきます。特に前の方に重点的に貼るようにして下さい。下まわりとは前部を1.4x2mmビス(大頭)で、後部を1.4x2mmビス(小頭)を使って止めて出来上がりです。

4.とにかく車体が小さくって、そのスペースの殆どがモーターなので、ウエイト配分の調整に手間取るかも知れませんが、上手くいった時の感動はひとしお。早速あなたの軌道にもデビューさせてあげて下さい。