キット組立講座

木曽の加藤製47号機U



2001年に一度だけ発売された製品が、皆様からの強い御要望により改良再発売されました。
 森林鉄道における加藤製作所製DLのシェアーは、酒井工作所製DLとは比べ物にならない程低いのですが、黎明期にあってはむしろ優位に立っていました。この機関車はそんな時代に木曽森林鉄道に導入されたもので、当初はガソリン機関車でした。
 本機は製造当初ごく一般的な加藤スタイルとも言える角張った姿をしていましたが、のちに上松運輸営林署機工課で大改造がなされました。丸みを帯びたラジエターグリルやキャブは、一目見たら忘れられないような強烈な印象を我々に与えます。模型製品では特徴あるそんな姿を再現するように努めています。
 この47号機の塗装の変遷は激しく、活躍期はエメラルドグリーン+マルーンという特殊な塗装で、末期はいわゆる王滝営林署塗装のライトグリーン+黒に、さらにライトグリーン+マルーンに塗られていましたが、保存にあたり上松運輸営林署塗装とも言えるクリーム+マルーンに塗られました。
 現在は長野市内の中部森林管理局(もとの長野営林局)前庭に本機は保存されていますので、機会があったら立ち寄ってその可愛さを実際に貴方の目でお確かめ下さい。



第1回
1.まず、上まわりから組み立てを始めます。ボンネットにラジエターグリルを天井合わせで半田付けし、仕切板を半田付けします。ボンネットに対してラジエターグリルが垂直になるように注意しましょう。そののちに排気管やテスリ、フィラーキャップや砂箱ハッチといった細かい部品を半田付けします。排気管の蓋は後ろ側にセットして垂直になるように留意しましょう。
 


2.キャブ側板に前後の妻板を半田付けしますが、ロストワックスの妻板の平面が歪んでいないかをチェックしておきましょう。もしも歪んでいたら指で直してから作業します。箱に組んだら、雨樋を側板のエッチングを目印に半田付けします。雨樋は左右あり、その水平部分が後妻板と一体になった縦雨樋に乗るようになるので、間違えないようにしましょう。ドアーの四辺には縁板を半田付けしてからテスリを半田付けしますが、裏側に飛び出たテスリはツライチに仕上げておきましょう。このドアーは側板にセットしますが、塗装の便を考慮して別に塗ってからエポキシ系接着剤で接着すると良いでしょう。前後方向は後妻板との合わせ目、上下方向はドアーの下面が後妻板の下面と合うようになります。
 


3.ここでボンネットとキャブとを組み合わせます。ボンネットの点検ハッチの裾が、キャブよりも少し下に出ますが、その量が左右で均一になるように留意しましょう。キャブに対してボンネットが直角になるようにも留意しましょう。


第2回
1.台枠には軸受を半田付けしますが、ロストワックス同士の半田付けには、そのままでは半田が流れにくいので、マッハのキサゲ刷毛で磨いておくと、半田はスッと流れるようになります。ステンレス用フラックスを使うと、なお良いでしょう。


2.台枠とエンドビームとを半田付けしますが、ここもやはり磨いておくと良いでしょう。垂直度には留意しましょう。歪みがないように箱状に組んだら、床板を落とし込んで半田付けします。そして前後の床板を半田付けします。幅方向はロストの縮み具合によって一定ではないので、現物合わせでヤスッてピッタリと合うように仕上げておきます。
 


3.次にギヤーフレームの組み立てです。まず片側のギヤーフレームに角型スペーサーを2個垂直に半田付けします。もう一方のギヤーフレームを半田付けして箱状にして、更に上方にスペーサー板を半田付けします。ここで一番大切な点は、歪みなく組み立てるということです。スペーサー板は水平になっていますか?いま一度確認をしておきましょう。


4.エンジンは排気管などに歪みがあれば修正しておき、主台枠に乗せてみて、エンジンが水平になるように後部ステイを曲げておきますが、前部にはラジエター後部の板が間に挟まりますので、その板厚を頭に入れておきましょう。これで良ければファンを瞬間接着剤で着けます。なお、排気管はU字部分を詰めるようにして前に寄せ、先端部を1mmカットしておきます。


5.配線コードは6cmの長さになっていますので、これを2cmと4cmにカットして、集電ブラシに半田付けします。モーター軸にはウォームギヤーを瞬間接着剤で止めた軸アダプターを瞬間接着剤で止めますが、モーターの軸受に接着剤が流れ込まないように充分注意しましょう。モーター軸への差し込み具合は、写真のように軸端がウォームギヤーの端から1mmほど出る位置まで差し込みます。ウォームギヤーを何か平らな台の上に立てて、瞬間接着剤を少量塗ったモーター軸を素早く突き立てると良いでしょう。さて、これで塗装作業に入ります。


第3回
1.まず当社の説明文に「プラカラーを塗ります」という言葉がときどき出てきますが、これは塗料の性質を利用したテクニックです。つまり塗料には強弱があって、ラッカー>プラカラー>エナメル系プラカラーとなっています(アクリル系は全く別の性質を持っているので、この話からは省きます)。つまりラッカーで塗った上にプラカラーを塗って、もし失敗してもプラカラーシンナーで消すことが出来ます。Hゴム表現などではみ出したときなどに便利ですね。ただ残念なことにプラカラーの被膜は弱いので、触っているうちに剥がれてしまいます。しかし、この上からクリヤーラッカーを吹き付けておけば、その心配もなくなります。「クリヤーでオーバーコートしておきます」というのはそのことですが、このクリヤーにももうひとつの利点があります。フラットベースを混ぜた艶消し塗料というのは被膜が弱くなってしまいます。ですから極力艶ありの状態で塗装を進行していき、最後に艶を揃える意味で、フラットベースを少し混ぜて色調を落ち着かせたクリヤーを塗ると良いのです。ウェザリングはこの後ですると良いでしょう。

2.さあ、塗装にかかります。当初のボディーは常磐線のようなエメラルドグリーン(マッハカラーの89番)+台枠が黒(当社製塗料WMC-02)、その後に草色(WMC-01)+黒(WMC-02)に塗られていましたが、晩年は草色(WMC-01)+マルーン(WMC-04)に、さらに保存するにあたってクリーム(WMC-03)+マルーン(WMC-04)と変わりましたので、好みに合わせて塗り分けます。赤系の塗料は下地が透け易いので、一旦グレーなどを全体に塗ってからマルーンを塗ると良いでしょう。他の部品は黒に塗ります。


3.写真のようにマスキングをして2色目を塗ったら排気管を黒く塗り、Hゴム窓にも黒を差しておきましょう。ライトリムとレンズ(裏側を銀色に塗っておきます)を組み合わせたものをヘッドライトケースにエポキシ系で接着しますが、前後で大きさが違うので間違えないようにしましょう。前の方が小さいライトです。この段階でなぜレンズを入れるのかというと、もしも接着剤がはみ出したとしても、クリヤーをあとで吹き付ければ目立たなくなるからです。
 




4.ラジエター本体を表現したプレス板(前から見たときにグリルからエンジンが透けて見えるのを防ぐためのパーツ)も黒く塗っておき、ラジエターカバー(内側=エンジン側は黒く塗っておきます)後方の角穴に差し込んでエポキシ系接着剤で止めます。ボンネット用ウエイトは黒く塗ってから接着しますが、塗る前に写真のように前側を斜めにあらかじめカッターで落としておいた方が良いでしょう。エンジンをボンネットに接着する際には、写真のようにエンジンとボンネットの隙間に爪楊枝を差し込み前側を強制的に下方に押え込み、ミッション部の下には爪楊枝を置いて上方にエンジンを向けさせると良いでしょう。
 


 


5.別売のアルプスモデル製インレタ(木曽B)を使ってナンバリングをしてから、クリヤーでオーバーコートします。軽くウェザリングしてから、市販のプラ板などで窓ガラスを貼って、最後にレンズにプラカラーのクリヤーを差して画竜点睛としますが、乾くと若干縮みますので、乾かしては塗りを3回ほどやると、まさに生きたレンズになります。別に黒く塗っておいたカプラーに短いピンを止め、これを長いピンを下から差し込んで主台枠に止めますが、それぞれは少量の木工用瞬間接着剤を利用すると良いでしょう。木工用ですと乾くのにちょっと時間が掛かるため「カブリ」もなく良いからです。


6.ギヤーフレームは黒く塗り、動輪の軸箱が入るU字型の部分はカッターで塗料を剥がしておきます。仮に動輪をはめてみて、きついようでしたらU字型の縁の塗料もカッターで剥がしてみましょう。大きなアイドラーギヤーをプラ製アイドラー軸で止めますが、間に細かい部品が入りますので、なくさないように注意しましょう。集電ブラシ両端のポチっと出た部分は外側を向いていますか?Eリングで止めてみてギヤーの回転が固い場合には、ギヤーフレームが少し歪んで組み立ててしまった証拠ですので、大きなアイドラーギヤーの側面をカッターで少しケズって対処しましょう。ヤスリですと摩擦熱でギヤーにバリが出てしまうので、ヤスリで削ってはダメです。小さなアイドラーギヤーには金属製のアイドラー軸を使います。動輪は2種類あり、ギヤーが厚い方が可動軸動輪でこれは前側にセットします。動輪の軸箱にはオイルを僅かに差しておき、ギヤーフレームに組み込みますが、可動軸の方は前側になるように、しかも軸箱の向きに注意しましょう。ちゃんと動輪は上下方向に可動しますか?そうでなければ軸箱を回転させて、前後方向ではなく上下方向に可動するようにセットしましょう。集電シューは動輪の裏側を軽く擦っていますか?あまり強く当たらないように注意しましょう。動輪押さえ板は1.4x2mm小頭ビスで止めますが、小さいアイドラーギヤーのEリングは開口部が下側になるようにしましょう。
  


7.ギヤーボックスと台枠・モーターを組み合わせます。ギヤーの噛み合わせを調整しながらモーターは1.4x5mmビスで止めますが、モーターとモーター台との間にはエッチングヌキパーツのランナーを小さくカットして挟んで下さい。これらの作業は動輪押さえ板を一旦外すとやり易いでしょう。モーターは文字を後ろ側(+端子は左側)にセットしておき、写真のように抵抗を間に入れて半田付けしますが、ご自分でこのモーターは定格6V仕様なので、スロットルをあまり上げ過ぎないようにしよう、と注意されるのでしたら、抵抗は入れなくてもOKです。


8.上まわりとは台枠用ウエイトを挟んで1.4x6mmビスで止めて出来上がりです。最後の仕上げとして、排気管はタミヤの「ウェザリングマスター」の「アカサビ」を使ってドライブラシ処理してみました。 さあ、この特徴ある加藤クンをどのように使いこなしますか?数ある酒井製5tDLの中に入れてやると、その存在感はなかなか魅力あるものではないでしょうか(^^♪。
 










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